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うみにいくるひとびと

海に生くる人々

葉山 嘉樹

線上閱讀葉山 嘉樹《海に生くる人々(うみにいくるひとびと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 161,305 字 · 321 頁

青空文庫

そして小樽から、直江津へ石炭を運んだ時の、出来事であった。

本船が秋田の酒田港沖へかかった、午後の一時ごろであった。まるでだし抜けに滝にでも打っつかったか、氷嚢でも打ち破ったかと思われるような狂的な夕立にあった。その時、船首甲板には天幕が張ってあった。それが、その風にあおられて、今にも、デッキごとさらって行きそうにブリッジから見えた。船長はすっかりあわてた。そして、あれをすぐ取れと、命じた。その時、夕立前の暑さで、おもては皆裸で昼食後の眠りをとっていた。そこへ、コーターマスターが駆け込んで「ウォーニン」をとれと伝えた。

波田、三上、藤原、西沢らは元気盛りではあるし、船長をそれほど「怖」れてはいなかったので、猿股一つで飛び出した。仙台と波田とは全裸で、飛び出した。それは風呂のない船においてのいい行水であった。だが、風が猛烈なので、仕事はすこぶる危険であった。ウッカリするとウォーニンのあおりを食って、海へ飛んで行かねばならなかった。それにしても、若い水夫らにとっては、それは、全裸であばれ回ることが「痛快」なことであった。彼らはしまいには、少々寒くなりながらも、裸でその作業をなし終えた。