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しんやのしちょう

深夜の市長

海野 十三

線上閱讀海野 十三《深夜の市長(しんやのしちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 頁

青空文庫

に動きまわった。どう考えてみたって、これで疲れなかったり、億劫がらなかったなら人間じゃない化物である。おまけに今夜はいつもの習慣によって夜の小睡眠もとっていない。こんなことでは今に身体を壊すにきまっている。今夜はこれ位にして、早々うちへ帰って睡るにしかずだと思った。だから「深夜の市長」への伝達は明日――といっても、本当はもう既に今日の領分に入っているが――にしようと決心した。それでまた元の丸ビル前まで出て、丁度そこへ流してきた円タクを呼びとめると、浅草まで五十銭でゆくように交渉して、その中へ乗りこんだ。深々としたクッションの中に身を埋めながら、窓越しに寝静まっているT駅を望んだ刹那、僕は忘れていたことを突然想い出して俄かに不安の念に駆られた。それはあの丸の内十三号館内の怪塔の上に仕かけられた暗視機の中を覗きこんでいる怪科学者速水輪太郎の黄色な顔のことであった。

このまま我が家へ帰れると思うと、僕は急に気がゆるみ、車上にトロトロと眠ってしまった。

「旦那、どの辺まで参りますか」

と、突然声をかけられて僕はハッと目覚めた。途端にクシーンと大きな嚏が一つ出た。