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しんやのしちょう
深夜の市長
海野 十三
線上閱讀海野 十三《深夜の市長(しんやのしちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 頁
僕は彼が支店長だなと悟った。
「……ちょっと用事ができまして、お願いしたいというんですが……」
と、面羞い言葉を支店長の耳に囁くと、
「畏りました。只今参りますとお伝えを……」
支店長は僕の胸に揺めいている翡翠の鍵に向って慇懃に挨拶をした。あまりうまく事が搬ぶので、僕はむしろ呆気にとられた程だった。
外へ出てみると「深夜の市長」は最前の位置で、じッと待っていた。
「まことにお待たせを……」
と、裏口から出てきたらしい支店長を見ると「深夜の市長」はニコニコしながら二、三歩近づき、
「早速ですが、二十九日の午後七時五十一分頃に、貴方のお店から新しい十銭白銅貨を沢山受取っていった男がなかったでしょうかね」
「はッ。十銭白銅を沢山に……二十九日の午後七時五十一分でございますか。はアて、当行に於きましては左様なお客様がお見えになりませんでした」
「そうかネ。いや、どうもお忙しいのに済みませんでした」
ぶっきら棒な挨拶をし終ると、「深夜の市長」はすぐさま僕のオーヴァを引張って、また歩きだすように信号した。
それは実に妙な光景だった。りゅうとした支店長と汚い服装をした「深夜の市長」