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しんざんのあき
深山の秋
小川 未明
線上閱讀小川 未明《深山の秋(しんざんのあき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 4,725 字 · 10 頁
」と、思いました。
それよりか、自分が、損をせずに、うまく危険から脱れたことを喜んだのでありました。
「長く山にいると、ろくなことはない。早く村に下りよう。」と、主人は、考えました。
この日、山の獣物たちは、老いざるの指揮に従って、行列を整えて、嶺から嶺へと練って歩きました。先頭には、かわいらしいうさぎが、つぎにおおかみが、そして、徳利を持ったくまが、きつねが、りすが、という順序に、ちょうど、さるが、岩の上で見た、天上の行列そのままであったのです。ことに人間が、足跡を絶ってから、まったく清浄となった山中で、彼らは、あわただしく暮れていく、美しい秋を心から惜しむごとく、一日を楽しく遊んだのでありました。やがて、彼らの列がある高い広場に達したときに、かつて天上の神々たちよりほかには知られていなかった芸当をして、打ち興じたことでありましょう。
そのころ、峠の茶屋の主人は、そそくさと山を降りる仕度をしていました。酒だるの上には、くまが置いていった、かきや、またたびまで載せてありました。村へ帰ってからの、自慢話にするのでしょう。そして、もう来年の夏、客があるまでは、この小舎にも用がないといわぬばかりに、閉めきった戸の一つ一つに、ガン、ガンとくぎを打ちつけていました。