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ぼうふううにおわったいちにち

清風荘事件 他8編

松本 泰

線上閱讀松本 泰《清風荘事件 他8編(ぼうふううにおわったいちにち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 20,532 字 · 43 頁

青空文庫

「でもわたし、いつもみんなに立派な口を利いているんですから、つまらない噂なんか立てられたくないのよ」

「そこは如才なくやるさ」

「では、どこかへ行くの? 蒲田の水明館?」

波瑠子は肩を揺すって笑いながら言った。

「さすがに知っているね」

「だって、お店に来るお客さんたちがよく誘いますもの。耳にたこができるほど聞いていますわ」

二人はその晩の十一時半に、水明館の横手で落ち合う約束をした。

波瑠子は店へは顔を出さずに、非常口から裏梯子を伝ってみのりを捜しに行ったが、少女が部屋に見えなかったので、小楊枝の先で障子に点字を書き残してふたたび店へ戻った。彼女は朋輩の信子に、

「わたし十分ばかりお店を空けるから、旦那が聞いたらなんとか要領よくやっておいてちょうだいね。それからここに書いてあることは明日でいいのよ。頼まれてちょうだいね」

と最前の手紙を渡して、暗くなった往来へ消えてしまった。

それから一時間ほどして、波瑠子は丸ビルの明治側の街路樹の陰に立っていた。そこへ外套の襟を立てた洋装の女が足早に歩いてきた。

「待って?」

「ええ、十分ばかり。でも、わりあいに早く来られたわね」