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まんかんところどころ

満韓ところどころ

夏目 漱石

線上閱讀夏目 漱石《満韓ところどころ(まんかんところどころ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 74,601 字 · 148 頁

青空文庫

人間は何の必要があって飯などを食うのか気の知れない動物だ、こうして氷さえ噛っていれば清浄潔白で何も不足はないじゃないかと云う気になった。枕元で人が何か云うと、話をしなくっちあ生きていられないおしゃべりほど情ない下賤なものはあるまいと思った。眼を開いて本棚を見渡すと書物がぎっしり詰っている。その書物が一々違った色をしてそうしてことごとく別々な名を持っている。煩わしい事夥しい。何の酔興でこんな差別をつけたものだろう、また何の因果でそれを大事そうに列べ立てたものだろう。実にしち面倒臭い世の中だ。早く死んじまえと云う気になった。

禎二さんが蒲団の横へ来て、どうですと尋ねたが、返事をするのが馬鹿気ていて何とも云う了見にならない。代診が来て、これじゃ旅行は無理ですよ、医者として是非止めなくっちゃならないと説諭したが、御尤もだとも不尤もだとも答えるのが厭だった。

そのうち日は容赦なく経った。病気は依然として元のところに逗留していた。とうとう出発の前日になって、電話で中村へ断った。中村は御大事になさいと云って先へ立ってしまった。

二

小蒸気を出て鉄嶺丸の舷側を上るや否や、商船会社の大河平さんが、どうか総裁とごいっしょのように伺いましたがと云われる。