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しょうねん

潤一郎ラビリンスI――初期短編集

谷崎 潤一郎

線上閱讀谷崎 潤一郎《潤一郎ラビリンスI――初期短編集(しょうねん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 41,319 字 · 84 頁

青空文庫

栄ちゃん、お前お嬢さんを呼んで見ないか」

二人は声を揃えて、

「光ちゃん、お遊びな」

「お嬢さん、遊びませんか」

と、二階の方へ怒鳴って見たが、ひっそりとして返辞はない。今迄聞えて居たあの音楽は、人なき部屋にピアノとやらが自然に動いて、微妙な響きを発したのかとも怪しまれる。

「仕方がないから、二人で遊ぼう」

私も仙吉一人が相手では、いつものようにも騒がれず、張合いが抜けて立ち上ると、不意ににうしろでげら/\と笑い声が聞え、光子がいつの間にか其処へ来て立って居る。

「今私達が呼んだのに、何故返辞しなかったんだい」

私は振り返って詰るような眼つきをした。

「何処であたしを呼んだの」

「お前が今西洋館でお稽古をしてる時に、下から声をかけたのが聞えなかったかい」

「あたし西洋館なんかに居やあしないよ。彼処へは誰も上れないんだもの」

「だって、今ピアノを弾いて居たじゃないか」

「知らないわ、誰か他の人だわ」

仙吉は始終の様子を胡散臭い顔をして見て居たが、

「お嬢さん、※(「言+墟のつくり」、第4水準2-88-74)をついたって知ってますよ。ね、栄ちゃんと私を彼処へ内證で連れて行って下さいな。