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しょうねん
潤一郎ラビリンスI――初期短編集
谷崎 潤一郎
線上閱讀谷崎 潤一郎《潤一郎ラビリンスI――初期短編集(しょうねん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 41,319 字 · 84 頁
一層の事、やぶれかぶれに先斗町へでも遊びに行こうか、それとも、もう少し此処に辛抱して、気分の静まる折を待って居ようか。だんだん日が暮れて、晩になって、夜が更け渡って、最終の電車が出て了うまで、つくねんと蹲踞った揚句やっぱり望みを達せずに、空しく木屋町へ戻る事になったら、却ってあきらめが着いてせいせいするだろう。
「や、Tさん、此れから孰方へお出掛けです。」
声をかけられて振り返ると、其れは友人のK氏であった。面長の冴え冴えした目鼻立に、きれいな髪の毛を前の方だけきちんと分けて、パナマ帽を心持ち阿弥陀に冠り、白足袋を穿き雪駄をつッかけて、なか/\軽快な服装をして居る。私は、何か犯罪が露顕した如くギョッとして、
「ちょいと大阪まで………」
と、口籠るように答えて、にやにやと変てこな笑い方をした。
「あ、そうですか、いつかお話しの徴兵の事で………」
K氏は直ぐに合点して、
「わたくしも今日用事があって、伏見まで参ります。そりゃ丁度よい所でしたな。御一緒に中途までお供しましょう。」
「えゝ」
「Tさんに御紹介します。此れは私の友人のAさんで………」
と云いながら、K氏は委細構わず自分の伴れの男―――色白の小太りに太った可愛らしい、八字鬚を生やした、三十二三のドクトルを紹介した。