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しょうねん
潤一郎ラビリンスI――初期短編集
谷崎 潤一郎
線上閱讀谷崎 潤一郎《潤一郎ラビリンスI――初期短編集(しょうねん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 41,319 字 · 84 頁
「あれ、また信ちゃんは人の物を徒らして居るんだね」
こう云って、友禅の振袖を着た十三四の女の子が襖を開けて駈け込んで来た。額のつまった、眼元口元の凜々しい顔に子供らしい怒りを含んで、つッと立った儘弟と私の方をきり/\睨め付けている。信一は一と縮みに縮み上って蒼くなるかと思いの外、
「何云ってるんだい。徒らなんかしやしないよ。お友達に見せてやってるんじゃないか」
と、まるで取り合わないで、姉の方を振り向きもせずに絵本を繰っている。
「徒らしない事があるもんか。あれ、いけないってばさ」
ばた/\と姉は駈け寄って、見て居る本を引ったくろうとしたが、信一もなか/\放さない。表紙と裏とを双方が引張って、綴ぢ目の所が今にも裂けそうになる、暫くそうして睨み合って居たが、
「姉さんのけちんぼ! もう借りるもんかい」
と、信一はいきなり本をたゝき捨てゝ、有り合う奈良人形を姉の顔へ投げ付けたが、狙いが外れて床の間の壁へ当った。
「それ御覧な、そんな徒らをするじゃないか。―――またあたしを打つんだね。いゝよ、打つなら沢山お打ち。此の間もお前のお蔭で、こら、こんなに痣になってまだ消えやしない。