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ひのついたかかと

火のついた踵

宮本 百合子

線上閱讀宮本 百合子《火のついた踵(ひのついたかかと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 16,781 字 · 34 頁

青空文庫

谷  仕舞まで話させてくれ。――それでね(みさ子に向い)人間は通性として、反動的なものです。自分が、何なく手に入れられ所有されると定ったものには、何といっても興味が薄れ、無感興になってしまうが、どうも難しい、余程の忍耐や手段を講じなければ、到底指も触れられないとなると、たとい、実際そのものの価値は低くても、人間は熱中し夢中になる。だからまあ、選挙などというものが、飽きもせず亢奮的(エキサイティング)な訳でしょうがね。――同じ心理が、矢張り、異性間の感情にもあるのです。

みさ子 (率直に)思わせぶりがいいの?

谷  まさか!(苦笑)そればかりということじゃあありますまい。――然し、夫婦の感情が鈍重(ダル)になるのは、確に一つは、互がもうすっかり互の所有になりきって、動きの取れない処にあるんだろうと思いますね。一方からいえば、もう死ぬまで、厭でも応でも、この男、この女、と定ってしまった処に――現在の社会では、定めるべく余儀なくされる処に、第一の苦源があるんです。だから、双方の感興、新鮮さを溌溂とさせて置くためには、どうしても感情的変化に富んでいなければならない――或る不安、緊張、亢奮が薬になるんです。