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ひのついたかかと

火のついた踵

宮本 百合子

線上閱讀宮本 百合子《火のついた踵(ひのついたかかと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 16,781 字 · 34 頁

青空文庫

振一郎 ――お互のことだ。……要求は限りないものだからね。人間は、五のものを与えられると、必ず七のものまで得ようとする。――

みさ子 ――

振一郎 とにかく、僕は失礼させて貰うから、皆さんによろしく。――勿論用があったら、いつでも来ていいんだからね。

来た垂帳の方から去ろうとする。みさ子、思わず後を追い、何か云おうとする。が、やめ、元気を失い、詰らなそうに、ぐったりと傍の長椅子にかける。

みさ子 (ひそやかに、独白)ああ、どうして、ああなんだろう……?

長椅子の端に肱をつき、凝っと前を見つめ考えに耽る。やがて、寂しさに堪えられないらしく、急に立上り、書棚の傍のベルを押す。きよ登場。

きよ お呼びでございますか?

みさ子 ああ、あのね、私の部屋へ行って、やりかけのスティッチを持って来て頂戴な。

きよ はい。(去る)

みさ子所在なさそうにヌックの方に行き、腰を下して、花壺の花をいじる。寧ろ、心は内へ内へと沈み、指先だけが無意識に微かな運動をするという風。

きよ、愛らしい紅色の繻子張小籠を持って来る。

きよ これでよろしゅうございますか?

みさ子 有難う――鋏があったかしら(籠の中を一寸検べる)ああ、これでいいわ。