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とうみょうのまき
灯明之巻
泉 鏡花
線上閱讀泉 鏡花《灯明之巻(とうみょうのまき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 23,444 字 · 47 頁
が、県道へ掛って、しばらくすると、道の左右は、一様に青葉して、梢が深く、枝が茂った。一里ゆき、二里ゆき、三里ゆき、思いのほか、田畑も見えず、ほとんど森林地帯を馳る。……
座席の青いのに、濃い緑が色を合わせて、日の光は、ちらちらと銀の蝶の形して、影も翼も薄青い。
人、馬、時々飛々に数えるほどで、自動車の音は高く立ちながら、鳴く音はもとより、ともすると、驚いて飛ぶ鳥の羽音が聞こえた。
一二軒、また二三軒。山吹、さつきが、淡い紅に、薄い黄に、その背戸、垣根に咲くのが、森の中の夜があけかかるように目に映ると、同時に、そこに言合せたごとく、人影が顕われて、門に立ち、籬に立つ。
村人よ、里人よ。その姿の、轍の陰にかくれるのが、なごり惜いほど、道は次第に寂しい。
宿に外套を預けて来たのが、不用意だったと思うばかり、小県は、幾度も襟を引合わせ、引合わせしたそうである。
この森の中を行くような道は、起伏凹凸が少く、坦だった。がしかし、自動車の波動の自然に起るのが、波に揺らるるようで便りない。埃も起たず、雨のあとの樹立の下は、もちろん濡色が遥に通っていた。だから、偶に行逢う人も、その村の家も、ただ漂々蕩々として陰気な波に揺られて、あとへ、あとへ、漂って消えて行くから、峠の上下、並木の往来で、ゆき迎え、また立顧みる、旅人同士