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ほのおのなかにうたう
焔の中に歌う
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《焔の中に歌う(ほのおのなかにうたう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 13,476 字 · 27 頁
「まあ先生、病人はもう直りましたよ、電話でそう申すのを、うっかり忘れて居たんです」
「ホウ――」
「この方が私の自動車と衝突して、気絶なすったので、驚いて先生をお呼びしたのですが、間もなく正気に復って、この通りお元気です。幸いちっともお怪我が御座いません、お呼び立てしてすみませんでした」
「イヤなに私に用事の無くなる方が、どんなに結構だかわかりません、では失礼」
「あれ、今お茶が入ります、御用事が無ければ、どうぞ御ゆっくりお話し下さいませ」
「有難う、もう宅へ帰るばかりで、用事も回診もありません、では暫くお邪魔をさして頂きましょうか」
「ご紹介いたしましょう、この方は深井……さん、こちらは、高木博士」
「よろしく」
「…………」
三人は客間の小卓を挟んで、巴形に坐ると、一方の扉が開いて今度は、一人の若い紳士が、大きな花束を持って入って来ました。道楽に小説も書く貴族の若様といった様子の青年で、磨き抜かれた容貌に何んとなく芸術家だけが持つ、一種の幽鬱さがあります。
「お邪魔では? ……」
「いいえ、どうぞこちらへ、今お茶を入れて、お話を新らしくしようという、丁度いいところです、高木博士は御存じでしたネ、深井さん御紹介いたしましょう、こちらは錦木さん」