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もゆるほお

燃ゆる頬・聖家族

堀 辰雄

線上閱讀堀 辰雄《燃ゆる頬・聖家族(もゆるほお)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 71,309 字 · 144 頁

青空文庫

……そのうちに、とうとうその蜜蜂は或る花を選んで、それにぶらさがるようにして止まった。その花粉まみれの足でその小さな柱頭にしがみつきながら。やがてその蜜蜂はそれからも飛び立っていった。私はそれを見ると、なんだか急に子供のような残酷な気持になって、いま受精を終ったばかりの、その花をいきなりりとった。そしてじいっと、他の花の花粉を浴びている、その柱頭に見入っていたが、しまいには私はそれを私の掌で揉みくちゃにしてしまった。それから私はなおも、さまざまな燃えるような紅や紫の花の咲いている花壇のなかをぶらついていた。その時、その花壇にT字形をなして面している植物実験室の中から、硝子戸ごしに私の名前を呼ぶものがあった。見ると、それは魚住と云う上級生であった。

「来て見たまえ。顕微鏡を見せてやろう……」

その魚住と云う上級生は、私の倍もあるような大男で、円盤投げの選手をしていた。グラウンドに出ているときの彼は、その頃私たちの間に流行していた希臘彫刻の独逸製の絵はがきの一つの、「円盤投手」と云うのに少し似ていた。そしてそれが下級生たちに彼を偶像化させていた。が、彼は誰に向っても、何時も人を馬鹿にしたような表情を浮べていた。