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とくしゅぶらくのはんざい

特殊部落の犯罪

豊島 与志雄

線上閱讀豊島 与志雄《特殊部落の犯罪(とくしゅぶらくのはんざい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 7,455 字 · 15 頁

青空文庫

薬鑵の中に少し残ってる微温湯をさした。手をつけてもなお冷たいのを、我慢して、ずぶりと頭を浸した。自棄に両手で頭をおしこすって、その後で顔を洗った。手拭で拭き取ると、顔がつるつるとして、髪の毛がぬるぬるとしていた。その毛を後ろにかき上げ、一寸小首を傾げながら、にやりとした。

跳ねるような足取りで歩いて行き、表の戸をがらりと引開けた。出たばかりの月の光りが、横ざまに流れていた。物の影が長く地面に印していた。それを暫く物色していたが、向うの小形の茂みが眼にはいると、かっと唾をして戸を閉めた。ランプを吹き消して、寝床に匐い寄り、頭から布団と蓆とを被った。

いつのまにか眠った。

夢の中で――地面に横たわってる真黒な物影が、むくむく起き上るのが見えた。起き上ってしまうと、月の光りを受けて真白になった。それが皆真裸の彼女の姿だった。顔だけが見えなかった。乳房と腹と臀とが馬鹿げて大きかった。それが踊るような恰好で、両腕を拡げながら、がっしりとした力強さで飛びついてきた。がその度毎に彼はよろけて、よろけるはずみに、彼女――彼女等の腕の下をすりぬけた。それが我ながら腹立った。