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おぎふくうた

犀星王朝小品集

室生 犀星

線上閱讀室生 犀星《犀星王朝小品集(おぎふくうた)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 105,794 字 · 211 頁

青空文庫

そして冷たい圧しつけるような眼付で馬上の武士を見るといった。

「兄上、何しに見えられた。」

「野に火が放けられたのだ、早くここを落ちのびろ。」

馬上の武士は経之だった。

「そして何処に行けばいいのだ、火の手は眼で見ているのだ。」

「焼死するつもりか。」

「此処よりほかに行く処がなければ、お察しのとおりでござろう。」

定明の顔色には、少しの動揺がなかった。

「その覚悟にも後悔はないか。」

「後悔はあるでしょう、だが、今は何もない、勝手にさせてもらいましょう。」

「では勝手にするがよい、おれはもうすることをしてしまったのだ。」

火はあたりに迫った。暗い煙が穴の前につなみのように寄せた。

「莫迦者、退かぬか。」

「退いてよければ勝手に退くのだ、御辺のお世話にならぬ。」

その時はじめて経之は或るふしぎな思いに引きもどされた。

「はぎ野は?」

「虱のわいている乞食武士には、女はいつき申さぬ。」

「なぜ女を斬らなかったのだ。」

「女は斬れそうで斬れない、はは。」

火は二人のあしもとに、ちろちろ飛んで燃えて来た。もう村人の声もしない、爆ぜる音ばかりが続き、凝乎としては熱風で息が窒まりそうだった。