輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

おぎふくうた

犀星王朝小品集

室生 犀星

線上閱讀室生 犀星《犀星王朝小品集(おぎふくうた)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 105,794 字 · 211 頁

青空文庫

「何時頃かや。」

「夏の月の中ほどに思われます。」

媼は腹をさすって見てから、間違いないと言った。すてははじめて眼に驚愕の情をあらわし、そしてそれを直ちに承認するふうであった。媼は生れる月と日頃とを示して、迎えがあるなら何時でもまいりますといって、下山して行った。すては疑いもなく貝ノ馬介のコドモを孕んでいることを知ったのだ。すては谷川べりに出て、眼にうるんだ優しい、いいようのないあまいようなものを腹の中に感じた。あの日のああいう短い瞬間に一人の人間は死に、一人の人間がうまれるべく用意されたことの、解きようのない出来事の謎がこの女を打って来た。袴野は彼女の前に突っ立ったまま怒ってどなった。

「一たい誰の子だ。」

すては答えなかった。袴野はその日からずっと臥ているすてを、ふて寝でもしているように邪魔者扱いにし、きりょうが衰えてゆく一人の女を卑しげに見据えていった。もっと隅っこに邪魔にならないよう寝ていろ、と。

春近くふたたび媼が登山して来た時、袴野は媼を塞の外に連れ出してきびしい質問を続け、媼は懐妊に不思議のないことを告げた、袴野はそれが孕んだ月をつぶさに聞き取り、媼にもはや訪れることなきように、叱るようにいった。