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おぎふくうた

犀星王朝小品集

室生 犀星

線上閱讀室生 犀星《犀星王朝小品集(おぎふくうた)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 105,794 字 · 211 頁

青空文庫

こういう辺土にいて母のいない家というものは、身に着けるものも見当らないほど淋しいものでござる。」

「お察しいたします。」

「それに川べりの冬は寒く気も沈むようなことが多い、そなたが見えられたこの冬は賑やかに歌など夜々のなぐさめに、ものそうではありませぬか。」

「嬉しくぞんじます。」

青年の顔色は青く寒げに見え、筒井は一種の願い事のようにやさしくいった。

「お風邪召すといけませぬ。そこまでお見送り申します。」

筒井は先に立った。

「お見送りはおそれ入る。」

「また明日という日のおとずれもございますゆえ。」

こうまで優しい申し出には青年の熱い気持も、そのまま心におさめ、今宵は引き取らねばならなかった。西の対で二人はしずかに別れた。

「筒井殿、我らこころよく寝みますぞ。」

「おしずかにお寝みあそばせ、ご覧じませ、あんなに明日はよいお天気のきざしにございます。」

「美しい星だ。」

星は冬が深くなるほど冴えて透って見え、美しくなるものだった。男は戸のうちにはいり、筒井はおのが部屋に引き取って行った。

筒井はきょうひらけた世界に向い、自らきびしく責める気持を経験した。避けるべきものは避けなければならぬ。