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きつね

狐

岡本 かの子

線上閱讀岡本 かの子《狐(きつね)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 6,039 字 · 13 頁

青空文庫

――これが評判のさつま芋というものか。町方では毒になるといったり、薬になるといったり、諸説まちまちだ。河豚は食いたし、命は惜しだな。

――貴公までそんなことをいう。やがて三つ児まで、駄菓子のように食い出すよ。

――こりゃあやしいまで甘い。だが怖い気もする。

――怖い気がするからあやしいまでうまいのだ。

――はあ、そうかも知れん。おっと忘れていた。貴公に土産を持って来た。上酒だぞ。

――ほほう、そりゃ忝けない。しばらく酒も飲まんな。折角の酒を何も肴がのうては。

――(空の具合を見廻して)どうだ、この黄昏の冬木立を賞美しながら、雑司ヶ谷あたりまで行かんか。あすこなら、芋田楽なり雀焼なり、何ぞ肴が見付かろう。

――そういう風流気はないが、貴公行きたければ同伴しよう。

――戸締りはせんのか。

――盗人が入っても盗らるるものは只今剥き捨てた甘藷の皮ばかりだ。

――は、は、は、は、は。

――は、は、は、は、は。

二

欅の並木の間に葭簾で囲った茶店一軒。

遠見に鬼子母神の社殿見ゆ。

――冬の月、骨身に沁みて美しいが、生憎と茶屋は締ってしまった。

――こんな時刻に来るものはあるまい。