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ろうしつき

狼疾記

中島 敦

線上閱讀中島 敦《狼疾記(ろうしつき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 23,540 字 · 47 頁

青空文庫

標本のうす埃をさえ浮かび上がらせている。それら無言の石どもの間に坐って、その美しい結晶や正しい劈開のあとを見ていると、何か冷たい・透徹した・声のない・自然の意志、自然の智慧に触れる思いがするのである。かなり騒々しい職員室から、三造はいつも、この冷たい石たちと死んだ動物植物たちの中へ逃れて来て、勝手な読書に耽ることにしていた。

今彼の読んでいるのは、フランツ・カフカという男の「窖」という小説である。小説とはいったが、しかし、何という奇妙な小説であろう。その主人公の俺というのが、鼠か鼬か、とにかくそういう類のものには違いないが、それが結局最後まで明らかにされてはいない。その俺が地下に、ありったけの智能を絞って自己の棲処――窖を営む。想像され得る限りのあらゆる敵や災害に対して細心周到な注意が払われ安全が計られるのだが、しかもなお常に小心翼々として防備の不完全を惧れていなければならない。殊に俺を取囲む大きな「未知」の恐ろしさと、その前に立つ時の俺自身の無力さとが、俺を絶えざる脅迫観念に陥らせる。「俺が脅されているのは、外からの敵ばかりではない。大地の底にも敵がいるのだ。