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ねことしょうぞうとふたりのおんな

猫と庄造と二人のおんな

谷崎 潤一郎

線上閱讀谷崎 潤一郎《猫と庄造と二人のおんな(ねことしょうぞうとふたりのおんな)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 68,020 字 · 131 頁

青空文庫

彼にはリリーを引き取った品子の真意と云うものが、今でもハッキリしないのだけれども、事に依ったら、塚本が報告を怠っているのも品子のさしがねではないのか、彼奴はそう云う風にしてわざと己に気を揉ませて、おびき寄せようと云う腹ではないのかと、そんな邪推もされるので、リリーの安否を確かめたいと願う一方、見す見す彼奴の罠に篏まってたまるものかと云う反感が、それと同じくらい強かったのであった。彼は何とかしてリリーには会いたいが、品子に掴まることはイヤでたまらなかった。「とうとうやって来ましたね」と、彼奴がへんに利口ぶって、得意の鼻をうごめかすかと思うと、もうその顔つきを浮かべただけでムシズが走った。元来庄造には彼一流の狡さがあって、いかにも気の弱い、他人の云うなり次第になる人間のように見られているのを、巧みに利用するのであるが、品子を追い出したのが矢張その手で、表面はおりんや福子に操られた形であるけれども、その実誰よりも彼が一番彼女を嫌っていたかも知れない。そして庄造は、今考えても、いいことをした、いい気味だったと思うばかりで、不憫と云う感じは少しも起らないのであった。