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ねこぐるま

猫車

宮本 百合子

線上閱讀宮本 百合子《猫車(ねこぐるま)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 17,310 字 · 35 頁

青空文庫

その姿は、そうやって平たくなっている自分の上を、今、金が急流をなして走って行く、だがその奔流の勢は余り激しくって手が出せないし、そんな下の方まではこぼれて来るものでもないことを観念しているのだと、語っているようなふうに見える。何となし猛烈な感じを与えるそのひとしきりが過ぎると、坂口の爺さんの手は再びたどたどと動き出して、三つ四つの書きこみを加えるのであるが、その書きこみは、違った呼名の下に違った数字で書かれてゆくことも珍しくはないのである。

この地方の家々は、村の狭い往来に向って店の土間から裏口までをぶっこ抜いて、細長い土間に貫かれていた。庄平の店の右手の低い板敷には、肥料・米俵・糠俵・煙突・セメント・左官材料等と、それを商うときにつかう大きいカンカン秤が置かれており、人気ない真昼間などには折々鼠の尻尾が俵の間に見えがくれした。春のこの頃は毎年肥料の渋いような脂のこげたような匂いが藁の匂いと交りあって濃く家じゅうに漂っている。土間の奥が広くなって、そこが台所であった。幅は三尺もない縁側めいたものが土間に向って六畳から張り出されていて、粗末な木の細長いテーブルがその縁側においてあった。