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げんだいにほんのかいか
現代日本の開化
線上閱讀夏目 漱石《現代日本の開化(げんだいにほんのかいか)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 18,455 字 · 36 頁
ことにそれ自身に活動力を具えて生存するものには変化消長がどこまでもつけ纏っている。今日の四角は明日の三角にならないとも限らないし、明日の三角がまたいつ円く崩れ出さないとも云えない。要するに幾何学のように定義があってその定義から物を拵え出したのでなくって、物があってその物を説明するために定義を作るとなると勢いその物の変化を見越してその意味を含ましたものでなければいわゆる杓子定規とかでいっこう気の利かない定義になってしまいます。ちょうど汽車がゴーッと馳けて来る、その運動の一瞬間すなわち運動の性質の最も現われ悪い刹那の光景を写真にとって、これが汽車だこれが汽車だと云ってあたかも汽車のすべてを一枚の裏に写し得たごとく吹聴すると一般である。なるほどどこから見ても汽車に違ありますまい。けれども汽車に見逃してはならない運動というものがこの写真のうちには出ていないのだから実際の汽車とはとうてい比較のできないくらい懸絶していると云わなければなりますまい。御存じの琥珀と云うものがありましょう。琥珀の中に時々蠅が入ったのがある。透かして見ると蠅に違ありませんが、要するに動きのとれない蠅であります。