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せいとしとのきろく

生と死との記録

豊島 与志雄

線上閱讀豊島 与志雄《生と死との記録(せいとしとのきろく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 18,961 字 · 39 頁

青空文庫

その上咋年の夏以来私達の近しい身内の者で病死した人が三人もあった。病気や死に対して神経が苛ら苛らしていた。で堯も容態が悪いようだったら、すぐにS医学士かまたはU医学士に診察を願おうと思った。U氏というのは、小児科では秀抜な手腕を有すると定評のある人で、最近小児科専門の病院を建てていた。

S子さんに、堯の便を持ってすぐにU医師を訪れて貰った。すると、便の色は薬のためである、便通は薬に多少下剤が混じているので少し度数が多くなるかも知れない、然し心配のことはない、という答えだった。で兎に角、もう夜も遅いし、翌朝まで容態を見ることにした。

十一時頃、堯は物を欲しがった。その日は、朝食に麺麭と山羊乳とを食べ、それから夕方同じくその少量を取ったばかりだった。で芳子は葛湯を作ってやった。そしてその少量を与えた。それから堯は暫くして安らかに眠った。熱も七度三分に下っていた。

私達は、堯の枕頭で暫く黙っていた。が何だか非常に淋しくなった。昼間M町通りを帰って来る時ふと玩具のことを考えたことを、私は話した。「これで、坊やが病気でもひどくなると、あれが虫が知らしたとでもいうようなことになるんだね。