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せいぜんしんごのこと

生前身後の事

中里 介山

線上閱讀中里 介山《生前身後の事(せいぜんしんごのこと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 41,804 字 · 83 頁

青空文庫

のだ。

併し彼が関西に根拠を置く実際上の必要から内演試演は彼の地でやり本舞台はこっちで開かねばならぬ、気に入らなければ即座に中止改演ということを堅く約束した、それが為には何処まででも我輩は試演の見分に行く、そうしてその試演が気に入らなければ何時でも止める、或は練りに練り直した上で公開すると斯ういうことを堅く手紙で約束して置いて、そうして大正何年の秋であったか神戸の中央劇場で試演をやるとのことであったから我輩は態々神戸まで出かけて行ったところが、神戸の中央劇場に辿り着いて見ると試演どころか絵看板をあげて木戸をとっての本興行だ、それを見た我輩の失望落胆から事がこじれて来た。

演劇と我(3)

しかし、沢田君も我輩が態々神戸まで出かけて来たと聞いて、竜之助の衣裳、かつらのまま楽屋から出口まで飛び出して来て我輩に上草履を進めたりなどする態度は甚だ慇懃のものだ、しかしもう開幕間際だったから、楽屋へは行かず直ちに桟敷に出て見物したが、竜之助が花道を出て大菩薩峠にかかるその姿勢がまた気に入らなかった、今更故人に対してアラを拾い立てるわけではないが、とにかく沢田君が出ると神戸の見物もなかなか湧いた