輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

せいしまんじどもえ

生死卍巴

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《生死卍巴(せいしまんじどもえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 91,598 字 · 182 頁

青空文庫

と、云うと部屋を飛び出した。

こうして二人の変な会見は、あっけなく終りを告げたのであったが、しかし碩寿翁にも弦四郎にも、すぐ意外な事件が起こった。

弦四郎の事件から書くことにしよう。

刑部屋敷を出た弦四郎が、上野の山下まで来た時であったが、紗を巻いたような月光の中から、

「あの方もご出立でございます。あなたもご出立なさりませ!」

こういう女の声が聞こえた。

「…………」

で、弦四郎は声の来た方を見た。

巫女姿の女が弦四郎の横手を辷るようにして歩いて行く。

「おお、あれはあの女だ」

で、弦四郎は見送るようにした。

月の光をヒラヒラと縫って、髪を垂らして、御幣を持って、脚に一本歯の足駄をはき、胸へ円鏡をかけている。衣裳といえば白衣であって、長い袖が風にひるがえり、巨大な蛾などが飛んでいるように見える。容貌なども美しいと見えて、月光にさらされた横顔の形は、鼻が高くて額が秀でて、頤が珠のように円味がかっていた。

「待て!」と、弦四郎は声をかけたが、すぐにスッと走り寄り、巫女の片袖へ手をかけた。

「千賀子殿でござろう、相違ござるまい!」

だがその巫女は返辞もしないで、取られた片袖を柔かに外し、同じ辷るような歩き方で、根津の方角へ足を運んだ。