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いなかきょうし

田舎教師 他一編

田山 花袋

線上閱讀田山 花袋《田舎教師 他一編(いなかきょうし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 156,097 字 · 312 頁

青空文庫

新しい教師は卓の前に来て椅子に腰を掛けたが、その顔は赤かった。読本を一冊持って来たが、卓の上に顔をたれたまま、しばしの間は、その教科書の頁をひるがえして見ていた。

後ろのほうでささやく声がおりおりした。

教室の硝子戸は埃にまみれて灰色に汚なくよごれているが、そこはちょうど日影が黄いろくさして、戸外では雀が百囀をしている。通りを荷車のきしる音がガタガタ聞こえた。

隣の教室からは、女教員の細くとがった声が聞こえ出した。

しばらくして思い切ったというように、新しい教師は顔をあげた。髪の延びた、額の広い眉のこいその顔には一種の努力が見えた。

「第何課からですか」

こう言った声は広い教室にひろがって聞こえた。

「第何課からですか」とくり返して言って、「どこまで教わりましたか」

こう言った時には、もう赤かった顔の色がさめていた。

答えがあっちこっちから雑然として起こった。清三は生徒の示した読本の頁をひろげた。もうこの時は初めて教場に立った苦痛がよほど薄らいでいた。どうせ教えずにはすまされぬ身である。どうせ自分のベストをつくすよりほかにしかたがないのである。人がなんと言おうが、どう思おうが、そんなことに頓着していられる場合でない。