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こうがさぶろうしにこたう

甲賀三郎氏に答う

夢野 久作

線上閱讀夢野 久作《甲賀三郎氏に答う(こうがさぶろうしにこたう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 4,679 字 · 10 頁

青空文庫

同時に永い間因襲され、伝統されて来た人間道が不合理視され、不自然視されて、禽獣道が合理視され、自然視されるようになった。それは在来、衣裳美を主として描かれていた絵画が、洋画の輸入以来、裸体美を主眼として描かれるようになったのと同じ程度の変化であった。

それが吾々日本人にとって、たしかに新しい傾向であった事は、やはり誰しも否定し得ないところであろう。

ところが又その明治末期から、大正以降に於ける探偵小説の輸入と流行は、そうした傾向を更に低級化し、深刻化した。モット尖鋭な肉慾や、変態心理や、モット露骨な犯罪心理、病的幻覚錯覚に深入りし礼讃する趣味、傾向を日本人に逆照して見せた。そうしてその逆照手段が探偵小説の本格、変格のあらゆる角度に向って急速に分析され、分離され、印象化され、感覚化され、表現化され、構成化され、超現実化され、未来化され、ダダ化され、ユーモア化され、ノンセンス化されて行った。

だから探偵小説は、嘗て流行していた、あらゆる種類の文芸の中から進化し生まれた、より新しい、より深い、より痛い文芸であった。一切の芸術の伝統精神と形式から離脱して、人間の心理を一層深くアケスケに抉り付け、分析し、劇薬化し、毒薬化し、更に進んで原子化し、電子化までして行くための芸術界の鬼っ子であった。