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うみがめ
異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二(うみがめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,507 字 · 291 頁
いずれにしても、僕は子どもの時から市野を知っていると正直に答えた。しかし自分は近年東京に出ていて、彼と一年に一度会うぐらいのことであるから、その近状についてはなんにも知らないと、あらかじめ一種の予防線を張っておいた。
「今夜もこれから市野君のところへ行くんですか。」と、僕は空とぼけて訊いた。
「実はもう少し前まで一緒にいたんですが……。もう今頃は死んでしまったでしょう。」
僕もおどろいた。なにぶんにも暗いので、彼女がどんな顔をしているか、どんな姿をしているか、もちろん判断は付かないのであるが、平気でそんなことを言っているのを見ると、おそらく発狂でもしているのではないかと疑っていると、相手はまた冷やかに言った。
「わたくしはこれから警察へ行くんですよ。」
「なにしに行くんです。」
「だって、あなた。人間ひとりを殺して平気でもいられますまい。」
相手もおちついているだけに、僕はだんだんに薄気味わるくなって来た。どうしてもこの女は気違いらしい。不意に白い歯をむき出して僕に飛びかかってくるようなことがないとも限らないと思ったが、今さら逃げ出すことも出来ないので、僕はよほど警戒しながら一緒にあるいた。