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うみがめ
異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二(うみがめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,507 字 · 291 頁
たしかに市野さんだと判ったときに、わたくしは夢中で駈けて行って、だしぬけに市野さんに抱きついて、その胸のあたりに顔を押し付けて、子供のようにしくしく泣き出しました。なぜ泣いたのか、それは自分にも判りません。唯なんだか悲しいような気持になったんです。」
「その晩おそくなって、わたくしは家へ帰りました。」と、女は言った。「今頃までどこを遊びあるいていたと、母や兄から叱られましたが、わたくしはなんにも言いませんでした。とても正直に言えることじゃあないからです。それから一日置き、二日おきぐらいに、日が暮れてから川端へ忍んで行きますと、いつでも約束通りに市野さんが来ていました。こうして、たびたび逢っているうちに、母や兄がわたくしの夜遊びをやかましく言い出して、一体どこへ出かけて行くのだと詮議するので、しょせん自分の家にいては思うように逢うことが出来ないから、いっそ何処へか奉公に出ようと思ったんですが、それも母や兄が承知してくれないので、市野さんと相談の上でわたくしはとうとう無断で家を飛び出してしまいました。
といって、市野さんもまだ親がかりの身の上で、わたくしを引取ってくれるというわけにもいかないのは判り切っていますから、そのときに三十円ばかりのお金を受取ったんですが、世話をしてくれた人の礼金に十円ほど取られて、残り