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うみがめ
異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二(うみがめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,507 字 · 291 頁
僕も一時の錯覚から眼が醒めて、人魚の正体は海亀であることを発見したが、美智子さんはやはり人魚だというのだ。まあそれはそれとして、僕に異常の恐怖をあたえたのは、その海亀が浪のあいだから最初は一匹、つづいて二匹、三匹……。五匹……。十匹……。だんだんに現われて来て、僕たちの舟を取囲んでしまったのだ。海はおだやかで、波はほとんど動かない。その渺茫たる海の上で、美智子さんと僕のふたりは海亀の群れに包囲されて、どうしていいかわからなくなった。
一体かれらは僕たちの舟を囲んでどうするつもりかと見ていると、小さい海亀がまた続々あらわれて来て、僕たちの舟へ這いあがって来るのだ。平生ならば、小さな海亀などは別に問題にもならないのだが、美智子さんは無暗に怖がる、僕もなんだか不安に堪えられなくなって、手あたり次第にその亀を引っ掴んで、海のなかへ投げこんだ。ただ投げ込むばかりでなく、それを礫にして大きい奴にたたきつけて、一方の血路をひらこうと考えたのだ。それは相当に成功したらしいが、何をいうにも敵は大勢だ。小さい舟の右から左から、艫からも舳からも、大小の海亀がぞろぞろ這いこんで来る。