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うみがめ
異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二(うみがめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,507 字 · 291 頁
場所が場所だから、女なぞが出て来るはずがない。それは痩形で背の高い、髪の毛の白い女で、着物は何を着ているかはっきりと判らないが、顔だけはよく見えるんです。髪の白いのを見ると、老人かと思われるが、その顔は色白の細おもてで、まだ三十を越したか越さないか位にも見える。そういう次第で、年ごろの鑑定は付かないが、髪の毛の真っ白であるだけは間違いない。その女がわたしの机の前に立って、わたしの書いている紙の上を覗き込むようにじっと眺めていると、不思議にわたしの筆の運びがにぶくなって、頭もなんだか茫として、何を書いているのか自分にも判らなくなって来る……。君はその女をなんだと思います。」
「しかし……。」と、わたしは考えながら言いました。「試験場には大勢の受験者が机をならべているんでしょう。しかも昼間でしょう。」
「そうです、そうです。」と、山岸はうなずきました。「まっ昼間で、硝子窓の外には明るい日が照っている。試験場には大勢の人間がならんでいる。そこへ髪の毛の白い女の姿があらわれるんですよ。勿論、他の人には見えないらしい。わたしの隣りにいる人も平気で答案を書きつづけているんです。