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うみがめ
異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二(うみがめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,507 字 · 291 頁
「今夜の話はこの場かぎりで、当分は誰にも秘密にしておいてくれたまえ。いいかい。奥さんにも伊佐子さんにも暫く黙っていてくれたまえ。」
奥さんはともあれ、伊佐子さんがこれを知ったら定めて驚くことであろうと、わたしは気の毒に思いましたが、この場合、かれこれ言うべきではありませんから、山岸の言うがままに承諾の返事をして置きました。
お代りの蒲焼は二人ともにちっとも箸をつけなかったので、残して行くのも勿体ないといって、その二人前を折詰にして貰うことにしました。それは伊佐子さんへのお土産にするのだと、山岸は言っていました。熊手と唐の芋と、うなぎの蒲焼と、重ね重ねのおみやげを貰って、なんにも知らない伊佐子さんはどんなに喜ぶことかと思うと、わたしはいよいよ寂しいような心持になりました。
表へ出ると、木枯しとでも言いそうな寒い風が、さっきよりも強く吹いていました。宿へ帰るまで二人は黙って歩きました。
四
おみやげの品々を貰って、伊佐子さんは果して大喜びでした。奥さんも喜んでいました。その呉れ手が山岸であるだけに、伊佐子さんは一層嬉しく感じたのであろうと思うと、わたしは気の毒を通り越して、なんだか悲しいような心持になって来たので、そうそうに挨拶して、自分の部屋へはいってしまいました。