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うみがめ
異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二(うみがめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,507 字 · 291 頁
天明五年の頃、麹町に十兵衛という飴屋があって、平素から正直者として知られていたが、ある日の夕方に見馴れない男の子が来て店先に遊んでいるので、十兵衛は商売物の飴をやると彼はよろこんで帰った。その以来、夕方になると彼は飴を貰いに来た。それが幾日も続くばかりか、かつてここらに見かけない子供であるので、十兵衛もすこしく不審をいだいて、ある日ひそかにその後を付けてゆくと、彼は半蔵門の堤づたいに歩み去って、濠の中へはいってしまったので、さてはお濠に棲む河童であろうと思った。男の子はその後しばらく姿を見せなかったが、ある日又たずねて来て、さきごろの飴の礼だといって、一枚の銭を呉れて行った。銭は表に馬の形があらわれていて、裏には十二支と東西南北の文字が彫られてあったということである。こうした類の怪談は江戸時代の山の手には多く伝えられていたらしい。
そこで、今夜かの三人の若侍が見たという怪しい老婆も、その場所が鬼婆横町であるだけに、もしやかの伝説の鬼婆ではないかという疑いが諸人の胸にわだかまって、歌留多はそっちのけに、専らその妖婆の問題を研究するようになったのである。