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うみがめ

異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二(うみがめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,507 字 · 291 頁

青空文庫

」

横町の中ほどの溝のふちには、さっきと同じように真っ白な物が坐っているらしかった。それはもう二間ほどの前であるので、三人は思わず立ちどまって透かし視ようとする間もなく、かの白い影は忽ちすっくと起ちあがった。

こちらの三人は、路が狭いのと、傘をさしているのとで、自由に身をかわすことが出来なかった。白い物はさきに立っている神南の傘の下を掻いくぐって、二番目に立っている堀口に飛びかかった。

「さっきの一言おぼえているか。」

それが石川の声であると覚った時には、堀口は傘越しに肩さきを斬られて雪のなかに倒れていた。神南も森積もおどろいて前後から支えようとすると、石川は身をひるがえして大溝へ飛び込んで、川獺のように素ばやく西のかたへ逃げ去った。あっけに取られたのは神南ら二人である。かれらは石川を追うよりもまず堀口を抱え起して介抱すると、疵は左の肩先を深く斬り下げられていた。幸いに堀口の屋敷は近所であるので、神南は残って彼を介抱し、森積はその次第を注進に駈けて行った。

堀口の屋敷から迎いの者が来て、手負いを連れて戻ったが、なにぶんにも疵が重いので治療が届かなかった。