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うみがめ
異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二(うみがめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,507 字 · 291 頁
その美智子が突然に死んだのだから、清はどんなに驚いているか、どんなに悲しんでいるか、それを思うと僕の頭はいよいよ暗くなった。
もちろん葬式の間に合わないのは僕も覚悟していたが、殊に暑い時季であったために、葬式はもうおとといの夕方に執行されたということを、僕は実家の閾をまたぐと直ぐに聞いた。
「じゃあ、早く墓参りに行って来ましょう。」
「ああ、そうしておくれ。美智子も待っているだろう。」と、母は眼をうるませて言った。
旅装のままで――といったところで、白飛白の単衣に小倉の袴をはいただけの僕は、麦わら帽に夕日をよけながら、菩提寺へいそいで行った。地方のことだから、寺は近い。それでも町から三町あまりも引っ込んだところで、桐の大木の多い寺だ。寺の門をくぐって、先祖代々の墓地へゆきかかると、その桐の木にひぐらしがさびしく鳴いていた。
見ると、妹の墓地の前――新ぼとけをまつる卒塔婆や、白張提灯や、樒や、それらが型のごとくに供えられている前に、ひとりの男がうつむいて拝んでいた。そのうしろ姿をみて、僕はすぐに覚った。彼はとなりの息子の清に相違ない。顔を合せたらまず何と言ったものか、そんなことを考えながらしずかに歩みよると、彼は人の近寄るのを知らないように暫く合掌していた。