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うみがめ
異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二(うみがめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,507 字 · 291 頁
それを思うと、かれは一途に福井をうたがうわけには行かなかったが、実際その鐘がどこかに横たわっていたならば、自分の眼にもはいりそうなものであったという気もするので、今や三上の問いに対して、かれは右とも左とも確かな返事をあたえることが出来なかった。
「どうもおかしいではないか。貴公にも見えない。おれにも見えないという鐘が、どうして福井の眼にだけ見えたのだろう。」と、三上は又ささやいた。「あいつ年が若いので、うろたえて何かを見違えたのではあるまいか。藻のなかに龍頭が光っていたなどというが、あいつも貴公とおなじように魚の眼の光るのでも見たのではないかな。」
そういえばそう疑われないこともない。大原はうなずいたままでまた考えていると、三上はつづけて言った。
「さもなければ、大きい亀でも這っていたのではないか。亀も年経る奴になると、甲に一面の苔や藻が付いている。うす暗いなかで、その頭を龍頭と見ちがえるのはありそうなことだぞ。」
まったくありそうなことだと大原も思った。彼はにわかに溜息をついた。
「もしそうだと大変だな。」
「大変だよ。」と、三上も顔をしかめた。
ありもしない鐘をあると申立てて、いざ引揚げという時にそのいつわりが発覚したら、福井の身の上はどうなるか。