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うみがめ
異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二(うみがめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,507 字 · 291 頁
五、六日の後にはようやく正気にかえって、寝床の上で粥ぐらいをすすれるようになった。
家内のものは病人に秘していたが、大原はおいおい快方にむかうにつれて、かの鐘ヶ淵の水中に意外の椿事が出来していたことを洩れ聞いた。三上はその夜帰って来ないので、家内の者も案じていると、あくる朝になってその亡骸が鐘ヶ淵に発見された。彼はきのうと同じように半裸体のすがたで刀を背負って、ひとりの若い男と引っ組んで浮かんだままでいた。組み合っている男は福井文吾で、これも同じこしらえで刀を背負っていた。福井も無論死んでいた。
福井の家の者の話によると、彼はお供をすませて一旦わが家へ帰って来たが、夕飯を食ってしまうとまたふらりと何処へか出て行った。近所の友達のところへでも遊びに行ったのかと思っていると、これもそのまま帰らないで、冷たい亡骸を鐘ヶ淵に浮かべていたのであった。
三上が鐘ヶ淵へ行った子細は、大原ひとりが知っているだけで、余人には判らなかった。福井がどうして行ったのかは、大原にも判らなかった。他にもその子細を知っている者はないらしかった。しかし三上と福井の身ごしらえから推量すると、かれらは昼間の探険を再びするつもりで水底にくぐり入ったものらしく思われた。