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はくとうのうた
白塔の歌
豊島 与志雄
線上閱讀豊島 与志雄《白塔の歌(はくとうのうた)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 21,450 字 · 43 頁
「これからは注意して下さい。あんな所へ僕を尋ねてきて、それも夜遅く……。」
「然し、秘密な用だったものだから。」
「それがいけないんです。秘密は白昼公然の場所で為すべきものですよ。この頃、僕達は少し睥まれているんです。」
「何かあったの。」
「それは、こちらから聞きたいことですよ。あんなもの、何にするんですか。」
「ちょっと、人から頼まれたので……。」
「然し、こんなちっちゃいのは、役には立ちませんよ、玩具にならいいけれど。」
「勿論玩具だ。玩具だと僕は信じてる。」
その調子があまり真面目だったせいか、黒眼鏡の青年はじっと汪紹生の方を眺めました。そして笑いました。
「あなたは正直だ、だから僕はあなたが好きなんです。……当ててみましょうか。若い女か老年の紳士か、いずれそんなところへ贈るんでしょう。」
汪紹生は黙っていました。
「少しいいすぎましたか。なあに、心配はいりませんよ。」
二人は中海の岸に出ていました。枯蓮の池は蕭条として、午後の陽に冷たく光っていました。楊柳の大木の並木の下には、通行の人もありませんでした。
その楊柳の一本の影に、黒眼鏡の青年は急に立止って、内隠しから、小布に包んだ物を取出し、汪紹生に差出しました。