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しらぎく

白菊

夢野 久作

線上閱讀夢野 久作《白菊(しらぎく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 12,486 字 · 25 頁

青空文庫

……が……そうした死人じみた片頬に、弱々しい、泣き笑いじみた表情をビクビクさせると、彼は仁王立ちに突立ったまま、鼻の先の空間に眼を据えた。

咽喉の奥をゼイゼイと鳴らした。

「……オレは……オレは……ちっとも怖くないんだぞ……畜生。コレ位の事は平気なんだぞ……エヘ……エヘ……」

そう云ううちに彼は力が尽きたらしくガックリと低頭れた。タッタ今、自分が成し遂げた最大、最高の仕事を、振り返り振り返り、懐中のマキリを押えながら、ヒョロヒョロと出て行った。

彼の背後から静かに静かに閉まって行った重たい扉が、忽ち、轟然たる大音響を立てて、深夜の大邸宅にどよめき渡りつつ消え失せた。

……あくる朝……。

晴れ渡った晩秋の旭光がウラウラと山懐の大邸宅を照し出すと、黄色い支柱を並べた外廊下に、白い人影が二つほど歩みあらわれた。

それは白絹のパジャマを着流した、若い、洋髪の日本婦人と、やはり純白のタオル寝巻を纏うた四ツか五ツ位の、お合羽さんの女の児が並んで、むつまじそうに手を引き合った姿であった。

若い洋髪の女性は、片手で寝乱れた髪を撫で上げながらも、こうした大邸宅にふさわしい気品のうちにユックリユックリと白羅紗のスリッパを運んで来たが、やがて棕櫚のマットの中央まで来ると、すこし寒くなったらしく、襟元を引き合わせて立ち止まった。