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しろあり

白蟻

小栗 虫太郎

線上閱讀小栗 虫太郎《白蟻(しろあり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 54,099 字 · 106 頁

青空文庫

事実、人間の精神生活を朽ちさせたり、官能の世界までも、蝕み喰い尽そうとする力の怖ろしさは、けっして悪臭を慕ったり、自分自ら植つけた、病根に酔いしれるといった――あの伊達姿にはないのである。いやむしろ、そのような反抗や感性などを、根こそぎ奪われてしまっている世界があるとすれば、かえってその力に、真実の闇があるのではないだろうか。それはまさに、人間退化の極みである。あるいは、孤島の中にもあらうし、極地に近い辺土にも――そこに棲む人達さえあれば、必ず捉まえてしまうであろう。けれども、そういった、いつ尽きるか判らない孤独でさえも、人間の身内の中で意欲の力が燃えさかり、生存の前途に、つねになんらかの、希望が残っているうちだけはさほどでないけれども、やがて、そういったものが薄らぎ消えてくると、そろそろ自然の触手が伸べられてきて、しだいに人間と取って代ってしまう。そこで、自然は俳優となり、人間は背景にすぎなくなって、ついに、動かない荘厳そのものが人間になってしまうと、たとえば虹を見ても、その眼醒めるような生々した感情がかえって自然の中から微笑まれてくるのである。