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しろあり
白蟻
小栗 虫太郎
線上閱讀小栗 虫太郎《白蟻(しろあり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 54,099 字 · 106 頁
云うまでもなく、それには原因があって、この地峡も、過去においてはなんべんか興亡を繰返し、いくつかの血腥い記録を持っていたからであり、また一つには、そこを弾左谿と呼ぶ地名の出所でもあった。天文六年八月に、対岸の小法師岳に砦を築いていた淵上武士の頭領西東蔵人尚海が、かねてより人質酬いが因で反目しあっていた、日貴弾左衛門珍政のために攻め滅ぼされ、そのとき家中の老若婦女子をはじめに、町家の者どもまで加えた千人にもおよぶ人数が、この緩斜に引きだされて斬首にされてしまった。そして弾左衛門は、その屍を数段に積みかさね、地下ふかく埋めたのだった。ところが、その後明暦三年になると、この地峡に地辷りが起って、とうにそのときは土化してしまっている屍の層が露き出しにされた。そうすると、腐朽しきった屍のなかに根を張りはじめたせいか、そこに生える草木には、異常な生長が現われてきて、やがてはその烈しい生気が、旧い地峡の死気を貪りつくしてしまったのである。そうして、いまでも、その巨人化と密生とは昔日に異らなかった。相変らず、その薄気味悪い肥土を啜りとっていて、たかく懸け垂れている一本の幹があれば、それには、別の茎がなん本となく纏わり抱きあい、その空隙をまた、葉や巻髭が、隙間なく層をなして重なりあっているのだが、そうしているうちには、