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しろあり

白蟻

小栗 虫太郎

線上閱讀小栗 虫太郎《白蟻(しろあり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 54,099 字 · 106 頁

青空文庫

しかし、すぐにはおいそれと、はっきりしたものが、泛んではこないので、だんだんに焦れだしてくると、いつのまにか意識の表面を、雲の峰みたいなものが、ムクムク浮動してくるのでした。そして、それが尻尾だけであったり、捉えてみると別のものだったりして、なにしろ一つの概念だけはあるのですが、どうにもそのはっきりしたものを掴み上げることができず、ただいたずらに宙を摸索って、それから烏とか、山猫とか屍虫とかいうような、生物の名を並べはじめたのです。すると、その時お母さまが、仔鹿の生眼のことを口にすると、十四郎がそれに、たぶん熊鷹に抉り抜かれたんだろう――と云いましたわね。それが重大な暗示だったのです。そのひと叩きに弾かれて、意識の底からポンと反動で、飛び出してきたものがあったはずです。つまり、それがたかにかよ――高代ではありませんか。ねえ時江さん、確かにそうだったでしょう。いいえ、当推量なもんですか。それでは、綺麗な斑のある片身を、なぜ、十四郎には金輪際とれぬ――と貴女は云ったのです?」

もうその時には、時江は顔を上げることもできなくなり、滝人の不思議な精神力に、すっかり圧倒されてしまった。