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しろがねのえず
白金之絵図
泉 鏡花
線上閱讀泉 鏡花《白金之絵図(しろがねのえず)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 23,356 字 · 47 頁
「袖にかくして持ってござった。それを柿の樹の大な葉の桐のような影で食べました。鬼瓦ではなけれども、その時に涙を流いて、やがて、立って、月を見れば、棟を見れば、鬼瓦を見れば、ほろほろと泣けました。
さて、その娘が縁あって、われら宿の妻に罷成る、老人三十二歳の時。――あれは一昨年果てました。老の身の杖柱、やがては家の芸のただ一人の話対手、舞台で分別に及ばぬ時は、師の記念とも存じ、心腹を語ったに――いまは惜からぬ生命と思い、世に亡い女房が遺言で、止めい、と申す河豚を食べても、まだ死ねませぬは因果でござるよ。
この度の釣狐も、首尾よく化澄まし、師匠の外聞、女房の追善とも思詰めたに、式のごとき恥辱を取る。
さて、申すまじき事なれども、せんだって計らずもおがみました、貴方のお姿、お顔だちが、さてさて申すまじき事なれども、過去りました、あの、そのものに、いやいや貴女、令嬢、貴女とは申すまい、親御でおわす母君が。いやいや……恐多い申すまい。……この蕎麦掻が、よう似ました。……
やあ、雁が鳴きます。」
「おお、……雁が鳴く。」
与五郎は、肩をせめて胸をわななかして、はらはらと落涙した。