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しろがねのえず

白金之絵図

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《白金之絵図(しろがねのえず)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 23,356 字 · 47 頁

青空文庫

」

「狐が点す……何。」

と顔を蔽うた皺を払って、雲の晴れた目をる、と水を切った光が添った。

「何、狐が点すか。面白い。」

扇子を颯と胸に開くと、懐中を広く身を正して、

「どれ、どこに……おお、あの葉がくれに点れて紅いわ。お職人、いい事を云って下さった。どれ一つぶら下げて参るとします。」

「ああ、隠居さん、気に入ったら私が引ちぎって持って来らあ。……串戯にゃ言ったからって、お年寄のために働くんだ。先祖代々、これにばかりは叱言を言うめえ、どっこい。」と立つ。

老人は肩を揉んで、頭を下げ、

「これは何ともお手を頂く。」

「何の、隠居さん、なあ、おっかあ、今日は父親の命日よ。」

と、葭簀を出る、と入違いに境界の柵の弛んだ鋼線を跨ぐ時、莨を勢よく、ポンと投げて、裏つきの破足袋、ずしッと草を踏んだ。

紅いその実は高かった。

音が、かさかさと此方に響いて、樹を抱いた半纏は、梨子を食った獣のごとく、向顱巻で葉を分ける。

「気を付きょうぞ。少い人、落ちまい……」と伸上る。

「大丈夫でございますよ。電信柱の突尖へ腰を掛ける人でございますからね。」

「むむ、侠勇じゃな……杖とも柱とも思うぞ、老人、その狐の提灯で道を照す……」