輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

しらがこぞう

白髪小僧

杉山 萠円

線上閱讀杉山 萠円《白髪小僧(しらがこぞう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 98,770 字 · 194 頁

青空文庫

その時にこの広い宮中はひっそりと静まり返って、針の落ちる音までも聞こえる位でした。

この時青眼先生は只一人紅矢の枕元に座って、毒薬の瓶を懐に入れたまま、最早悪魔が来るか来るかと待っていました。けれども夜中過ぎまでは何事も無く、只紅矢の苦しい呼吸の音が、夜の更けると一所に静まって行くばかりでした。ところが真夜中が過ぎて、やがて夜が明けようかと思わるる頃になりますと、庭のどこからか歌を唄う女の美しい声が聞こえて来ました。

「紅矢は顔を見た。

悪魔の顔を見た。

悪魔の顔を見たものは

殺されるのが当り前。

妾は悪魔。妾は悪魔。

屹度紅矢を殺すぞよ」

その声は、青眼先生がどこかで一度聞いた事のある声のように思いましたが、この時はどうしても思い出せませんでした。この声を聞き付けますと、紅矢は忽ち眼を見開き、頭を擡げて――

「あの声。あの声。悪魔のこえ。妹の美紅の声」

と叫びました。

青眼先生は直ぐに窓から飛び出して、声のする方に駈け出しました。そうして片手を罎の栓へかけて、出会い頭に毒薬をふりかけてくれようと、血眼で駈けまわりましたが、不思議や悪魔はどこへ行ったか影も形も無く、只霜風が身を切るように冷たくて、大空には星の光りが降るように輝いているばかりでした。