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はくはつき

白髪鬼

江戸川 乱歩

線上閱讀江戸川 乱歩《白髪鬼(はくはつき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 112,046 字 · 224 頁

青空文庫

というのは、夫を失って悲歎に暮ていなければならない筈の瑠璃子が、さも呑気らしく、微笑さえ浮べて、月夜の庭園のそぞろ歩きをしているとは、ちと変ではないか。夢にも予期しなかった体たらくだ。

イヤ。待てよ。悲しみが極まると、人は一時狂気に陥ることがある。か弱い瑠璃子は、若しかしたら、わしを失った悲しさに、気でも違ったのではあるまいか。

愚にも、わしはそこまで気を廻した。

気が違ったのなら、いと安いことだ。わしが茂みから飛び出して、しっかり抱きしめてやったなら、嬉しさに、元の瑠璃子に返るは必定だ。

と、わしは隠れ場所から身を現わそうとしたが、その時又も目に留まるは、瑠璃子の側に、搦みつく様にして歩いて来る我が弟、イヤ弟よりもなお親しい、わしの唯一人の親友、川村義雄の姿であった。

川村は一方の手で瑠璃子の手を握り、残る片手を瑠璃子の腰に廻して、夫婦でさえ人目をはばかる程の有様で、さも睦じく歩いて来るのだ。

わしが如何に馬鹿者でも、これを見て、川村と瑠璃子と二人共、気が違ったのだと考える程愚ではない。彼等は愛し合っているのだ。わしが変死をとげたのを幸、不義のちぎりを結んでいるのだ。