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もうじんどくしょう

盲人独笑

太宰 治

線上閱讀太宰 治《盲人独笑(もうじんどくしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 10,171 字 · 21 頁

青空文庫

まさしく昨日なり、出雲の人にして中山といわるる大人が、まさしく同じ琴を造る事を命じたまいぬ、と。勾当は、ただちにその中山という人の宿を訪れて草々語らい、その琴の構造、わが発明と少しも違うところ無きを知り、かえって喜び、貴下は一日はやく註文したるものなれば、とて琴の発明の栄冠を、手軽く中山氏に譲ってやった。現在世に行われている「八雲琴」は、これである。発明者は、中山通郷氏という事になっている。なお彼は、文政十年、十六歳の春より人に代筆せしめ稽古日記を物し始めたが、天保八年、二十六歳になってからは、平仮名いろは四十八文字、ほかに数字一より十まで、日、月、同、御、候の常用漢字、変体仮名、濁点、句読点など三十個ばかり、合わせても百字に足りぬものを木製活字にして作らせ、之を縦八寸五分、横四寸七分、深さ一寸三分の箱に順序正しく納めて常時携帯、ありしこと思うことそのままに、一字一字、手さぐりにて押し印し、死に至るまで四十余年間ついに中止せず克明にしるし続けた。ほとんど一世紀以前、日本の片隅に於て活版術を実用化せしもの既にありといっても過言で無い。そのほか、勾当の逸事は枚挙に遑なし。