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もうもくものがたり
盲目物語
谷崎 潤一郎
線上閱讀谷崎 潤一郎《盲目物語(もうもくものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 75,341 字 · 148 頁
のは、朝露軒と申される法師武者でござりました。このおかたはなにごとにも器用でおいでなされ、琵琶、三味線などもみごとにおひきなされますところから、わたくしもかねてじっこんにねがっておりましたので、ふしまわしのたしかなことはとくよりぞんじておりましたなれども、いまの楊貴妃のうたの文句に耳をかたむけておりますと、「雨を帯びたるよそほひの、太液の芙蓉のくれなゐ、未央の柳のみどりも、これにはいかでまさるべき、げにや六宮の粉黛の、顔色のなきもことわりや、顔色のなきもことわりや」と、そうおうたいなされるではござりませんか。もとより朝露軒どのはそんなおつもりではござりますまいけれども、きいておりますわたくしの身には、おくがたの御きりょうをうたっておられるようにしか受け取れませぬので、あゝ、それほどにおうつくしい花のかんばせも、こよいをかぎりに散っておしまいなさるのかと、この期になっていまだに未練がきざしてくるのでござりました。すると朝露軒どのは、「あれ、あれにおる座頭はしゃみせんを弾きまするぞ、おくがたのおゆるしをいたゞいて、あれにいちばんうたわせてごらんなされ」