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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
線上閱讀本庄 陸男《石狩川(いしかりがわ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 頁
むろんこの人夫は、舟を操ることでは、ずぶの素人ではなかった。それだけに彼の気分は重苦しかった。横ともなく縦ともなく、川波は随意に泡だっていた。それを押しきらねばならぬのは玉目三郎の気持であった。それもまた人夫には、自分の掌を見るようにはっきりとわかっていた。
草小屋のなかは空っぽであった。いつの日かに何処かの人間が火を焚いたのであろう。煙のにおいがほのかにただよっていた。丸太材をならべた床に腰かけて湿った弁当をつかった。腹の底から冷えて来た。どうしようもなくがたがたとふるえていた。その唇をかみしめて立ちあがるのであった。
二人は一人になっていた。ひとつの意志が別の身体を支配しているに過ぎなかった。片方が小屋のなかから櫂と棹を持ちだすと、他方が丸木舟の綱をひきよせていた。岸にごつんと当って乗りあげた舳のわきから、先の男がとびこんだ。水垢を掻きだした。綱をたぐった他のものが舳を川下に向けて押しこくった。棹は斜めにかまえられていた。ぐらつく舟は前と後に重みをつけ、拍子にずしんと水をおし退けた。岸べづたいに舟は流れだしていた。
水に浮ぶと、川は限りもない広さであった。